WORKS導入事例
共創商品は新規の購入者を増やす、 カルビーの「堅あげポテト 応援部」
カルビー株式会社 新規顧客を連れてくるカルビー株式会社はお客様の声や、ファンとのコミュニティを長年大切にしている企業として知られています。
こだわりの和の世界観でお客様から親しまれている「堅あげポテト」のコミュニティとして現在実施中の「堅あげポテト 応援部」 のファンとの共創商品開発プロジェクトや、継続してアンバサダーマーケティングをやられている理由などを伺いました。
堅あげポテトファンサイト「堅あげポテト 応援部」のマネージャーとして、様々なコンテンツの企画立案および進行し、ファンの皆様の「堅あげ愛」を高める活動をしています。
お客様の声をとことん改良に活かすカルビーの社風
吉田:本日はよろしくお願いします。片倉さんは昨年末より「堅あげポテト 応援部」のご担当になられたと伺っております。まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
片倉さん:2020年度までは営業部門に所属しており、スーパーマーケットなどの小売店様を担当し、新商品のご紹介や商品のプロモーションなどを提案・実施し、多くのお客様にカルビー商品を購入頂くための仕事をしていました。2021年4月よりマーケティング本部に異動し慣れないことばかりですが、勉強させてもらいながら担当しております。
吉田:ファンの方々に応援してもらうためのアンバサダープログラム「堅あげポテト 応援部」は、お客様の声を大切にされている活動です。カルビーさんは、ファン活動だけでなく、お客様の声を改善に役立てる会社としても有名ですよね。
片倉さん:カルビーお客様相談室に届いた声には商品担当者も目を通しています。また、お客様相談室は、全社メールでお客様の声を全社員にシェアしています。カルビーのホームページには、いただいたお客様のお声によって改良した製品などをお知らせする「お客様の声に学びました」というページも公開しています。
吉田:お客様の声をしっかり聞くだけではなく、それをもとに企業を動かしているのがわかりますね。すごいです。
片倉さん:例えば新商品を発売して2ヶ月くらいで販売状況を総括する場面があるのですが、そこではお客様相談室の声はもちろん、製品担当者がSNSでリサーチをして評判を確認しています。そこで「今年の○○はあそこがダメだったよね」というような声が見つかったとしたら、それをとりあげて改良に繋げていく、というということを、商品企画の担当になってから何度も実際に間近で見てきました。
「堅あげポテト 応援部」のお話をする片倉さん
吉田:多くの発言をもとに改良をするということだけではなく、お客様1人の何気ないつぶやきも検討して改良に繋げているんですね。驚きました。
ファンの案を忠実再現、共創商品の発売まで
吉田:こういったお客様の声を商品や改良に活かすカルビーの社風を代表する活動が、ファンとの「商品共創」であり、その一連の流れとして「堅あげポテト 応援部」が存在しているのかなと思っておりますが、商品の共創に関して詳細をお伺いできますでしょうか。
片倉さん:「堅あげポテト 応援部」は自由に登録できるアンバサダープログラムとして運営しており、年に1度、ファンの皆様の声をもとに新商品を作るのが、一大イベントとなっています。
吉田:毎回私も新商品をチェックしていますが、この味が出たか!と驚きがあるラインナップですよね。どんなふうに商品開発が進んでいくのでしょうか。
片倉さん:2021年9月から2022年1月 にかけて期間限定発売した共創品堅あげポテト 炙り帆立味を例に説明します。
まず、2020年9月 、応援部の皆様に向けた味案のアイデアの募集からスタートしました。この時は、「みんなに薦めたくなっちゃう新しい味」という募集テーマをカルビーが設定し、2週間程度の期間で、過去最高の1,654件もの案が集まりました。
ここから、商品企画担当者と開発担当者がそのアイデア一つ一つ全てに目を通していきます。開発の実現性や、堅あげポテトの大切にしている和の世界観と合致する味わいかどうかなどの判断基準に沿って3件に絞り込みました。
吉田:募集をする際に「みなさまが食べたい味募集します」ではなく、「薦めたくなっちゃう味」というのも応援部ならではですね。ここにはどういった意図があるのでしょうか。
片倉さん:前提として考えるのが難しくない、且つ堅あげポテトらしさを大切にできるようなテーマを!と考え設定しました。過去には「自分時間に食べたい味を考えよう」「疲れた体を元気づける新しい味を考えよう」となっていました。今回は、「この商品は堅あげポテト応援部の活動として、カルビーと一緒に創った商品なんだよ」と人にお薦めしやすいテーマにしています。
吉田:そして、選ばれたのが今回の「炙り帆立味」ということですね。
片倉さん:はい、選ばれた味でパターン違いの試作品を3つ用意します。これを11月に実施した「共創品試食開発イベント」で、部員の皆様とコミュニケーションを取りながら試食して頂き、味の方向性を決めて行きます。
コロナ禍ということで、この時は初めてのオンラインイベントという形になりましたが、普段であればなかなか見られないカルビーの開発センターと中継を結び、商品を試作する工程をオンラインならではの趣向で楽しんでいただくことができたと思います。
試食開発イベントの中では、試食と併せて実際に試食した味のイメージを元にパッケージのデザインにも挑戦して頂きます。参加者の皆様に思い思いに描いて頂いたパッケージデザイン案を元に集約して、専属デザイナーがデザイン案を起こしていきました。
「炙り帆立味」のパッケージは、火の「炙り感」をしっかりと伝えたいということ、また「炙り」を彷彿とさせる赤と「海」を連想させる青で構成したいというアイデアが多く見られました。それを活かした3つのパッケージデザイン案を作成し、最終的に応援部で決選投票を実施して採用案が決まりました。
吉田:パッケージは試食をした後というのがミソですね。
片倉さん:やはり味わいのイメージをパッケージデザインにも活かして頂きたいので、試食後にデザインをお願いするようにしています。
帆立の炙り感を大切にして欲しいとのご意見も頂いたので、帆立が網の上で炙られているシズル感は特別に撮影をいたしました。
吉田:発売されるときはファンの皆様の声をどう活用されているのでしょうか。
片倉さん:応援部の方に向けて、完成した商品を発売前に試食いただくキャンペーンを実施しています。当選された方に実際の商品をお送りし、食べた感想や商品のお薦めのポイントを寄せていただきます。その寄せられたお声は、商品発売時に店頭で使用される販促物に掲載されます。
実際に食べていただいて、ファンの感想の声を反映した状態で発売できるのが強みで、それを見た新規のお客様でも「良さそうだ、食べてみようかな」となる方も多いようです。また、パッケージの帯に「ファンが選んだ味No.1」というメッセージが打てるので、それをきっかけに興味を持つ方も多いです。
実際に店頭で使用されたファンの声が掲載されている販促物
吉田:今、実際にファンの方が描いたパッケージデザイン案を拝見しておりますが、反映度が95パーセントくらいで驚いてしまうのですが…。片倉さんは以前違う部署に所属されていたということで、ここまでファンの声を忠実に反映されているとご存知でしたか。
片倉さん:まさかここまでとは知らなかったです。ファンの皆様の熱量もイベント等で間近で感じると、本当に堅あげポテトを大切に愛してくださっているのが分かります。味の方向性を決める際にも、社内ではBかな、という意見が多数だった場合でも、応援部の皆様の声を聞いてAで進行しようとなるなど、まさに“共創”商品だと感じています。
こういった商品があることをもっと多くのお客様に知っていただき、「堅あげポテト 応援部」の存在を知ってもらいたいと思っています。
ファンの活性化のため、様々なSNS企画で意欲を刺激
吉田:片倉さんは、この1年間、「堅あげポテト 応援部」の担当として、Twitterでのトレンド入りを目標にファンの方々と活動したり、応援部内のブログを書かれたりと、ファンの方と一緒にコミュニティを盛り上げる活動をされてきましたね。SNSへの投稿執筆などもされているそうですが、いかがですか。
片倉さん:外から堅あげポテトのTwitterの内容を見ているときには、Twitterの中の人って楽しそうだな、なんて思っていましたが、実際に自分がTwitterの運営をするとなると、メンションやDMにはセンシティブな内容のお声も多く飛んできますし、どうお答えすればいいかと悩むことも多く、Twitterの中の人の苦労を知りました。そんな中で、皆様の好意的な意見を読むのは癒やされるひとときです。心の中でいつも、いいね!しています(笑)。
吉田:Twitterでは、堅あげポテト炙り帆立味がらみのハッシュタグ企画もありましたね。
片倉さん:「#旅した気分で炙り帆立」というもので、ハッシュタグと一緒に、お薦めの旅行先を紹介いただく企画でした。旅行が自由にしづらい時期だからこそと企画したのですが、投稿の条件にはなかったものの、ご参加いただいた皆様が自発的に写真を用意してくださり、タイムライン上に多くの写真が上がり、見ているだけで旅行気分が味わえる、とてもすてきな企画になりました。
この盛り上がりから派生して、3月31日より堅あげポテトのフォトコンテスト「#ニッポンには堅あげポテトがある フォトコンテスト」を開催します。堅あげポテトにぴったりな美しいニッポンの風景、伝統や文化を感じられるお写真を募集する企画になっています。
吉田:楽しみですね。ファンマーケティングをやられている企業の中で、活発に活動しているファンとそうではないファンとで熱量がグラデーションになる場合があるかと思います。応援部の皆様にはどういった施策を用意されているのでしょうか。
片倉さん:今年度は、初めてオリジナルグッズのプレゼント企画をしてみました。
河野:11月8日は堅あげポテトの日なのですが、2021年は堅あげポテトの誕生日にちなんで「堅あげ愛を深めよう」という応援部員限定企画を実施しました。一定期間中に部活動を頑張ってくださった方に、Twitterアイコンと応援部特製タンブラーをお渡ししたところ、応援部に入ったものの活動がなかった部員の方の活動にかなり動きが出ましたね。
片倉さん:河野さんとも相談しているのですが、部員数が1万4000人を超えてきて、順調に増えている反面、ログインだけで止まってしまう方も一定数いらっしゃいました。ファンを活性化するための活動として共創商品の制作が目玉であることは変わらないのですが、そこまではできないという方もいます。
何より、ファンの方の熱量にもいろいろあり、その一人一人の方の熱量に合ったスタンスで堅あげポテトの人気に貢献いただけるような活動を用意することで、もっと参加いただける方を増やしたいと思っていました。
吉田:イベントとインセンティブを同時にやることで、ライトなファンの方も活動を増やしやすくなったということでしょうか。
片倉さん:この時は、エントリー数も多くなりましたね。
河野:タンブラーが欲しかった方、多かったみたいですね。もともと、やって欲しいことのアンケートでは、工場見学とオリジナルグッズという声はいつも上位でいただいています。
左:「堅あげポテト 応援部」マイページ内アンケート結果 右:応援部オリジナルタンブラー
片倉さん:今年は、そのタンブラーを超えるグッズを用意しておりますので、さらに活性化できるといいなと思っています。
その他にも常設で1投稿していただくと応援部のマイページ内でデジタルにはなりますが、1チップスたまり、30枚になると1袋に進化するなど嗜好を凝らしたデジタルコンテンツもあるので、ぜひご参加いただきたいです。
実感する 共創商品の新規顧客の流入増加
吉田:堅あげポテトの共創商品は、味の選択も完全にお客様主導ですし、先ほどのパッケージデザイン案では、ほぼ部員の方の案がそのまま活かされていて、「本当にここまで反映されているんだ」と真摯な姿勢に驚きました。
片倉さん:私も担当になってみて驚いたところです。 でもだからこそ、堅あげポテトは独自な発展を遂げている商品と言えるのかなと思っています。
吉田:このように共創商品を継続されている理由をお伺いできますか。
片倉さん:もちろんカルビーとしての社風もありますが、共創品は他の新商品と比較しても、お客様からの好意的なお声が多かったり、他の新商品を比較して普段は堅あげポテトを買わない方が買ってくださる割合が多かったりするなど、堅あげポテトの新規購買者の間口を拡大できる役割を持つ商品だからです。季節商品と比較してもお客様相談室に寄せられる声の件数が多く、反響・評判がとても大きいです。応援部共創品の実績として、第一弾で作った「ゆず塩レモン味」は、一般のお客様からもたいへん熱い支持とご要望をいただいて、複数回再販されております。
お客様は単純に商品を買っていただく消費者ではありません。私も営業で経験しましたが、お客様の声を反映することで、流通様からの評価も大きくなります。共創品は、お客様のお墨付きがすでにあるので、販売店様も安心して販売できる商品になるのです。ですから、今後も共創品の企画や販売は、ぜひ続けていきたいと思います。
吉田:ファンのリアルな声を活かしているからこそ、さらに売れる、そんな好循環がお話から見えてきました。ありがとうございました。
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