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ファンの行動とビジネス貢献の関係分析モデル『アンバサダーアナリティクス』開発の舞台裏|ファンの価値を可視化し、ビジネス貢献の証明に挑む【後編】

2021年10月18日 CROSS TALK

今回は、ファンの行動とビジネス貢献の関係分析モデル『アンバサダーアナリティクス』を開発した社内メンバーと、当社代表の上田が、開発に至る経緯や内容、また将来的な展望などについて語ったインタビューの後編です。
前編はこちらから

後編は、『アンバサダーアナリティクス』だけではなく『アンバサダープログラム』にも内容を拡大し、ファンマーケティングの深層に迫ります。

 

■アジャイルメディア・ネットワーク株式会社(AMN)
AMNは『個の力を最大化し、“小さな経済”を成長させる』をミッションに事業を展
開しています。製品/サービスのマーケティング活動をファンと共に推進する「アンバ
サダープログラム®」や、動画DX特許テクノロジー「PRISM(プリズム)」、D2C/SMBサク
セスを支援する「デジタルパンダ」「ヘアスタディ」事業を展開しています。
URL:https://agilemedia.jp/

 

■インタビュー参加メンバー

 

■ファンとの取り組みを検討されている全ての企業様へ向けて

―現在どれくらいのクライアント様に提供して、どのような反響をいただいていますか。

松宮:検証等を目的としたテスト導入を行っているフェーズなのですが、たくさんの要望をいただいて予想を超える反響なので、まだ全部にお応えできておらず順次ご対応を拡大している状況です。集まっているファンのマインドが他社に比べてどうなのか、を聞かれることが非常に多いですね。

クライアント様は、「どれくらい購買につながっているのか」というのも知りたい情報ではあるのですが、本当にその施策だけが影響して伸びた数字とは言い切れないことも理解しています。
ファンマーケティングを続けていくには、クライアント様の社内の理解を得ることが必要なのですが、数字は出せるけど本命とは言えないなかで、今の自分の取り組みを分かりやすく表現しやすいのが、競合他社とのファンマインドの比較なのだと思います。
例えば業界の平均はここだけど自社はこの位置ですと言えて、平均値が上がっていく様子や、差が開く状態を知ることが、報告しやすい状況に繋がるのですね。

上田:今回私たちが提案する『アンバサダーアナリティクス』のように新しい指標が出てきたときに、それを評価する術がないので、アベレージが欲しくなると思います。初めて見る指標だと、この数値の良し悪しを判断するベースがないので、他社との比較が求められるのは理解できます。

松宮:クライアント様も効果測定の方法を探していて、そういうのが測れるなら話を聞いてみたいという問い合わせはよくいただきます。そしてご説明した結果、一番知りたかったこと、解決する手段ではなかったけれど、近いところはあるから引き続き相談させてほしいと仰っていただけたり。

―『アンバサダーアナリティクス』を通してそういうご相談や問い合わせは増えたという実感はありますか?

松宮:ありますね。代理店の方も同じ部分で悩んでいたようで、全体的な話を含めご相談いただくことが増えています。

藤本:今現状ECでしか商品を販売していない、いわゆる通販会社様から導入したいという声をいただいているので、今後は購買データも分析対象となる事例も出来上がっていくのではないかと思います。

上田:コロナがひとつの大きなきっかけとなってEC化率も上がっていますし、今後はそこに対しての分析や、効率的なプロモーション方法の追求はさらに進んでいきますよね。データが集まる基盤が整ってきて、企業も投資しやすくなったタイミングに、『アンバサダーアナリティクス』がうまくかみ合ってきたのかもしれないですね。

―今後、どんなクライアント企業にお勧めしたいですか。

松宮ファンとの取り組みを検討されている全ての企業様へご提供したいです。もちろん『アンバサダーアナリティクス』を通じた分析だけではなく、ファンを育成・活性化させる『アンバサダープログラム』も是非ご検討いただければと思います。両方でも片方でも「ファンと何かの取り組みがしたい」という思いをお持ちであれば、必ずどこかにお役に立てるようになっています。

アンバサダープログラムは「企画の部分は自社でやりたい」「コンサルティングまで全てお願いしたい」など色々カスタマイズでき、クライアント様の理念や体制にあわせて柔軟に対応できるよう、今年の8月からプランも増やしています。
また、今までは提供先として大企業が主だったのですが、そこで培ってきた分析ノウハウや開発を重ねたシステムを、さまざまな需要に対応できるようメニューも刷新しました。これによって全ての企業様にお届けできる体制が、ようやく整ったという感じです。

 

■ファンマーケティングの実情と、クライアント担当者の課題

松宮:ちょっと突っ込んだ話になってしまうかもしれませんが、ファンとのコミュニケーションに関して“規模”を求めてスタートすると、懸賞コミュニティ(商品プレゼントを目当てに登録する層が多いコミュニティ)になってしまった、という話をよく聞きます。結果的に規模は膨らんだけれど、コミュニケーションの質や想いがなくて、商品をばらまくときだけ反応するような集まりになってしまい、こういうことがやりたかったのではない、とご相談いただくパターンがすごく多いのです。

例えば大企業で、尚且つ食品などを扱うクライアント様であれば、ROI(Return On Investment:投資収益率、投資利益率。その投資でどれだけ利益を上げたのかを知ることのできる指標のこと)とボリュームをもっと求めたいというご希望が強くあったりします。でもそこだけを追求すると、このコミュニティ自体は懸賞コミュニティになってしまう可能性が高いので、どうしたらそれを防げるかという作戦会議を一緒に行う、というようなケースですね。

上田:私たちが提供する「アンバサダープログラム」に限らず、色んなファンマーケティングの取り組みが増えてきて、まさに市場が広がってきている手ごたえがある中で、我々がお手伝いする機会や相談いただくケースが増えてきた、ということですよね。

松宮:はい、先ほどのクライアント様のようなケースは、自社で会員を抱えていらっしゃるところも多く、その中で規模やリーチを追求されていたりするのですが、そこを大事にしながら現時点での課題や悩みを解消していくことが大切だと思います。また、いかに担当者の方が社内に説明しやすい取り組みにしていくのか、というところまでお手伝いをしていく必要性を感じています。実際、そのような内容の問い合わせが最近多いと感じていますね。

上田:四家さんはブロガーイベントの時代から業界の変遷を見てきて、最近のトレンドや気づきなどはありますか。

四家:『アンバサダーアナリティクス』で様々なブランドの分析をして比較すると、「アンバサダーマインド」の五角形の型がかなり似通っています。おそらく調査対象をアンバサダーに限定している限りは、ある程度似たような傾向が出るのではないかと思っています。
要するに、アンバサダーってこういう傾向がある方々だよねという、その姿が数字で分かってきたということです。これがまずひとつの成果ですね。

一方で、企業様がすでに所有している顧客・見込み客・メール会員などの母集団に対して同じ調査を実施し、その傾向をアンバサダーと比較すると、違いが見られるはずです。おそらくいくつかのスコアでアンバサダーがかなり優位に立つと思われます。この「傾向の違い」こそが、アンバサダーの価値としてまず認識すべきものですね。

さらに、調査で明らかになったアンバサダーの傾向を元に、顧客・見込み客母集団の中から適任者を抽出し、アンバサダー向けの施策に参加してもらうことも可能になります。アンバサダープログラムが今まで以上に企業様のCRM(顧客関係構築の取り組み)にも貢献することができると思うのです。

藤本:今の話を諸々聞いていて思ったのですが、例えばファンであっても欲求の種類によってはネガティブなチェックをつけている方がいますよね。そのような方たちだけを抽出して数字を見るっていうのも、色々な気づきがありそうで面白いかなって。つまり、ある欲求は低いけど他の欲求はとても高いという傾向などから、何かそこから導き出せる活性化のポイントがあるかもしれないなと、ちょっと気になりました。

上田:よく“孤高のファン”って言ったりしますが、自分だけが価値を分かっていればいいという、選択理由を語れるファンっていますよね。特に市場のシェアではマイノリティのブランドだけれど、企業が何も支援しなくてもファンが身近な人の製品サポートをする、そういう環境を作り出しているブランドってあると思います。
一方で、なんとなくマジョリティのブランドが好きですっていう人も割合として多いでしょうし、この層のファンに対してどう接することでより良いファンに育成できるかを知りたいクライアント様も多いのでは、と感じます。

四家:全てのファンの方が「推奨」という行動を取るわけじゃないですよね。いっぱい買ってくれる方が、「推奨」もたくさんしてくれる、という訳ではない。「推奨」というのは、ファンにとっても比較的ハードルの高い行動なんですね。
でも、アンバサダー向けの調査においては「過去半年間に、その商品を他者に推奨した経験がある」方が7割を超えるケースもよくあります。アンバサダーは、ファンとしての熱量が高いだけでなく、ハードルの高い「推奨行動」を取ってくれるファンが多く集まる傾向があるのではないか、と推測できますよね。
我々のプログラムはそういう方々を抽出するノウハウと、その方々とコミュニケーションをとって、そのクチコミのパワーを最大化するノウハウっていうのを持っているから成立しているのです。色んなタイプのアンバサダープログラムがあると思うのですが、ある程度の傾向から成功の方程式は導き出せているので、先ほども言ったとおり調査結果としてアンバサダーの特性はそんなに変わらないかなと思っています。
だとすると今後はアンバサダーだけに限定しないで、もっと大きな母数の顧客層に対してコミュニケーションと分析を行えば、また違う結果が出て新たな視点を持てるので、その先も広がっていくのかなと思います。

 

■「人」を見ていくことはとても重要な要素

―アンバサダーアナリティクスを提供する側であるAMNのマインドについて、また今後の課題を教えてください。

藤本:アンバサダーアナリティクスは、最初にお話ししたように二つ大きなポイントがありまして、一つはファンをもっと知るというポイント。これはまさにAMNならではだと感じるのですが、いわゆる「人」に着目しています。
もう一つが成果を知る、ファンの価値を知る、ということですね。ここはまさに「ビジネス」「お金」に着目し、繋げたい部分になります。

たとえば成果の部分に特化して、お金を稼ぐというのも一つの方法だと思いますが、やっぱりファンを知るというところはAMNのメンバー全員が大事に思っているところですし、ないがしろにはできないです。人を知ることで「何でこの人はこのブランドが好きで、このブランドにどういうことを求めているのか」がわかり、それにより適切な施策や、相手が求めている体験を提供できると思っているので、「人」を見ていくことはとても重要な要素です。

そしてもう一つの、成果を測るという部分、これは「ファンの価値を知る」というところなのですが、ここに関しては先ほど話した通り、価値の証明にチャレンジしていきます。これは、ファンとコミュニケーションをとる企業の大部分が直面している課題の解決につながると思っています。また、これに着手することで、クライアント様のリアルな課題を色々と伺うことが出来たり、議論が活発化することによって改善ポイントも新たに浮上してきたりするので、今後もチャレンジを続けながらより良いものに進化させていきたいです。

―そのほかにアンバサダーアナリティクスや、アンバサダープログラムにおいて、実現したい具体的な取り組みはありますか。

松宮:現在クライアント様に提出しているレポートもどんどんブラッシュアップしていきたいですね。例えば、購買に関するデータについてですが、最終的にアンケートでとることも多々あり、それは回答者のフィルターがかかっているので実数値と乖離してしまっている可能性は否めない。そこをどうしていくのかは次のステージとしてトライしたい部分です。

藤本:非常に歯がゆい部分ではありますね。一番現実的なのは購買データを提供してもらうことになるのですが、それが全て可能なケースは限られていますよね。
今一番現実的なのがECでの購買データですが、一方でリアル店舗でのカウントはどう計測するか。会員カードの提示等である程度は計ることが可能ではあるのですが、どうしても足りない部分が出てきます。
例えば食品を例にとると自社ECで購入するお客様もいるのですが、数としては少なくて、結局スーパーとかで買われる方がほとんどという商材もあります。そうなってくるとデータをとることはとても難しくなりますよね。そこの部分をどうするか、というところにもトライしていきたいです。

上田:そうですね、購買貢献との相関を証明するのは順序だてて進めていくのがよいかもしれませんね。
例えば様々な影響を受ける要因が少ないWEBのSaaSやサブスクリプションのブランドで取り組んでみて、やっぱりこういうコミュニケーションを取るとLTV(Life Time Value:顧客生涯価値。顧客が取引を開始してから終了するまでの期間に、自社に対してどれだけ利益をもたらしたかという収益の総額を算出するための指標)が高まるとか、単価向上に繋がるということが分かれば、コミュニケーションによってより良い状態に態度変容したものという結果は、多少商材が変化しても同じような成果が得られるという納得感につながると思います。
いきなり商材に世の中の全部の行動データを紐づけて捉えるよりは、証明しやすいところからやっていく、一部のデータだけどそういうのが分かったというのは、お客様に興味を持ってもらえて、そこから更なるデータを取得して分析領域を広げていくチャレンジだと思います。

松宮:あとは「ファンコミュニティ」の概念をもっと広げられるようにしていきたいです。例えばLINEやSNS公式アカウント運用とのコミュニケーション設計上の連携であったり、様々なマーケ施策に組み込みやすくしたりすることで、多方面で「効いている」と実感していただきやすい仕組みにしていきたいと思っています。

実際、ファンとのコミュニケーションはLINEやSNSの公式アカウントでも可能ではありますし、現在でも色々な企業が積極的に取り組んでいて、“こうなったら成功”という一定のラインが出来つつあります。でも、コストをかけ人員を割いてエンゲージメントやフォロワー数が一定のところまで達した後には、やっぱり頭打ちになってこれ以上伸びにくいといった悩みが出てくることが多いのですよね。
ではその先どうするのかという課題に対する答えが「もう一段濃くて、熱いコミュニケーションがとれるアンバサダープログラム」と言えるようになりたいなと思います。

上田:今ってデジタルで簡単に繋がれる時代なので、多くの顧客との繋がりが増えていますし、データの量もすごく増加していますよね。一方で昔のように対面での接点は減ってきているので、ブランドの価値を的確に誤解なく、“正しく伝える”ことの難しさが増している時代だなと感じています。その点、アンバサダーアナリティクスはそこに対する1つの解決策で、企業とともにそれらを解決していくツールになりつつあるのではないかなと思っています。

もともとアンバサダープログラムはファンとリアルの体験を共有するブロガーイベントから始まっているので、そういった歴史の積み重ねも大きい気がします。もし私たちの事業がデジタルだけでインフルエンサーからスタートしていたら、インフルエンサーをフォロワー数だけでしか価値を把握できずに、ファンの貢献が多様であるという発想になっていない気がします。
でも最初から色んな人とリアルで話すというところからスタートしているので、今回みたいにファンって多様なんじゃないか、好きって多様なんじゃないかというところから立脚できたのが、私たちならではの強みだし、その価値を届けるのに非常に求められる時代なのではないかなと信じています。

ファンが発信する手段は増えているのですが、まずは人に着目してその多様性を明らかにしようという視点で開発した『アンバサダーアナリティクス』は、我々らしくてとてもいい分析モデルだな、と思います。

 

■「ファンの価値を証明する」というミッション

―最後に、今後の展望を教えてください。

藤本:SS部には「ファンの価値を証明する」というミッションがあります。担当者の方が社内でファンの価値をきちんと報告でき、取り組みを継続するためのエビデンスを提供できる状態を築いていきたいと思っています。

また、『アンバサダープログラム』を実施しているクライアント様だけでなく、ファンコミュニティを運用している企業や非営利組織にも提供できるものなので、そういったところにもベクトルの範囲を拡大していきたいと思っています。
あとは、先ほどの四家さんのお話のように、集まった実績データなどから業界や高関与・低関与、商材などの軸によってデータを分析しまとめることで、ファンの傾向や、どういう思いを持っている人がこのような業界にいる、といったような内容をリサーチエビデンスといった形で発表できるようにしていきたいですね。

松宮:私はやっぱり店頭購買に関してこだわっていきたい気持ちがあります。
また、アンバサダーやファンコミュニケーションの情報・知識を持っているのは割とアドバンテージだと思っていて、部の全員がその道のスペシャリストとして、クライアントの課題を解決していける存在になっていきたいと思います。

四家:基本的には構想はリーダーに任せているので、それを実現するための新しい道具を作っていきたいと思います。

上田:企業にとって、ますます既存顧客、会員、繋がっているお客様の重要性が増していっています。我々は、クライアント様のアンバサダーについて、場合によってはクライアント様自身より詳しくありたいという思いがあるので、そのためにはファンのことをより知ることが大切だと思っています。これは、当社のVISIONでもある「世界中の〝好き“を加速する」ために必須のことだと思っていますし、それを『アンバサダーアナリティクス』や『アンバサダープログラム』といったものを通じて推進していきたいと思っています。

藤本:大事なのは「ファンを置き去りにしない」ということだと思っています。成果だけを追い求めるのではなく、ファンを大事にできるのはAMNならではですし、AMNがファンを思って構築しているというのは伝えたいです。アマゾンのギフト券を配ればとりあえず登録者数が増える、ではなくて、ファンと真摯に向き合うってところは大事にしていきたいです。

上田:我々がやっていることは、「最終的にファンがもっとブランドを好きになるきっかけを提供すること」なんですよね。でもそれには、その活動にビジネス視点で成果を持たせないと企業がファンに投資をしなくなってしまうので、全ての企業が取り組むべき意味があるマーケティング活動であることを証明していきたいですね。